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2023年5月29日 更新
所信表明
令和5年開成町議会5月随時会議(5月26日)に山神町長が行った「所信表明」です。

所信表明

4月26日に町長に就任しましたが、初当選ということもあり、できる限り早い時期に所信を明らかにしたいとの申出に対し、本日、令和5年開成町議会5月第2回随時会議において、所信表明の機会をいただきましたことに、正副議長をはじめ、議員の皆様に厚く御礼を申し上げます。

今後4年間、開成町の舵取りを担うにあたって、私の目指す開成町の姿、まちづくりの基本姿勢とその手法、今後重点的に取り組むべき諸課題等について、順次述べさせていただきます。

コロナ禍により時代の流れが10年加速したと言われています。社会環境の変化の激しさを誰もが実感しているのではないでしょうか。

さらに、昨年来の物価高騰では、海の向こうでの出来事が、我々の日常生活に多大な影響を及ぼすことを改めて認識させられ、世界の動向を注視しなければならない現実を突きつけられています。

私たちの将来の生活や開成町の未来を見通し、町としての取組はどうあるべきかを考える上において、世界や日本全体の動向、人口の推移などを的確に把握していくことは必要不可欠です。

まず、近年の世界的な潮流ですが、真っ先に挙げられるのはSDGsに代表される、持続可能な社会の実現に向けた動きです。貧困撲滅、ジェンダー平等、差別や不平等の根絶、4Rに代表されるごみ削減など、世界中の各地域で取組が活発化しています。特に、地球温暖化問題が深刻化する中で、脱炭素社会に向けた社会・経済システムの変革に向けた動きが加速しています。

一方、米中貿易摩擦などによるグローバル・サプライチェーンのリスクの顕在化、ウクライナ侵攻に代表される地政学的リスクの高まりは、世界の今後の不透明感を一層強めています。私たちの今後の生活にも、物価や外国人旅行客の動向などを通じて影響を及ぼしてくることが想定されます。

次に、我が国の情勢については、世界人口が増加の一途をたどる一方、2008年の1.28億人をピークに減少過程に入っており、2023年4月の総人口の概算値は1.24億人となっています。将来人口は、10年後の2033年に1.18億人、30年後の2053年に1.02億人、約50年後の2070年に0.87億人と推計されており、50年間で約30%も減少するものと予測されています。予想以上のペースで人口減少・少子高齢化が進行しており、世界各国から注目されています。同時に高齢者単独世帯数が大幅増加しています。現在、全体の約1割を占めていますが、2040年には約2割まで割合が高まると予測されています。

経済情勢については、長きにわたるデフレ、名目・実質とも賃金の伸び悩み、産業の生産性の低下、国際競争力の低下などが指摘されています。また、高度経済成長期に相次いで建設された公共インフラや公共施設の老朽化が進んでいることも課題に挙げられます。
これらの他にも、晩婚化や非婚化が進み、生涯未婚率が急上昇していること、訪日外国人旅行者の数や外国人人口が急増していることも今世紀に入ってからの大きな変化です。

神奈川県及び足柄上郡5町の状況に目を向けてみますと、県の人口は、一昨年の2021年、統計開始来初めて減少に転じました。昨年も続けて減少、今年2023年も減少となる気配となっています。

足柄上郡の人口は残念ながら、国や県を上回るペースで減少しています。過去10年間では、国の▲2.1%に対し▲2.7%、過去20年間では▲1.9%に対し▲3.0%となっています。県西地域2市8町では、さらに厳しく、過去10年間では▲4.9%、過去20年間では▲6.9%となっています。

今後も、減少傾向は変わらず、足柄上郡5町の人口は現在の6.6万人が、2025年には1.1万人減の5.5万人まで、2045年には1.8万人減の4.8万人まで、約26.6%減少するものと見込まれています。

さて、私たちの開成町ですが、ご承知のとおり、昭和30年の町制施行以来、人口は増え続けています。昭和40年に、全町域を都市計画区域に編入し、計画的なまちづくりを進めた結果です。また、民間企業の積極的な投資や、様々な連携も、この好環境の大きな要因であると捉えています。

その他にも、町域が平坦で住みやすいこと、土砂災害のリスクがないこと、「田舎モダン」という表現に集約される人と自然がほどよく調和した町であるというイメージの良さも人口増加の背景と言えるでしょう。そして、開成駅の開業と急行停車、交通インフラの充実、小学校の新設開校などが相乗効果を発揮したものと理解しております。

人口に関連する他のデータを見てみますと、合計特殊出生率は1.60で、県内市区町村の中で1位を誇ります。年少人口の割合も14.6%と県内で2位となっています。一方で、高齢化率は26.2%と県西地域においては1番低いものの、県平均の25.8%を上回っており、県内市区町村との比較においては、生産年齢人口の割合がより低い町と言えます。また、全自治会で人口が増えているわけではなく、直近3年間、5年間、10年間の推移で見ると、それぞれ4~6の自治会で人口が減少しています。また、高齢化率について、1桁の地区がある一方で、40%台の自治会もあり、お住まいの地域によって人口構成が著しく異なる現状が見て取れます。

以上が私たちを取り巻く社会環境の総論となりますが、本題に入るまでに長い時間をいただくこととなり、申し訳なく思います。しかしながら、あらゆる政策や取組は、データをはじめとする合理的根拠に基づくものであるべきであると考えていることから、敢えてこのような形を取らせていただきました。

これらの社会環境を踏まえ、私の目指す開成町の姿、まちづくりの基本姿勢や今後重点的に取り組むべき諸課題等を述べさせていただきます。

まず、全国的にも、また、神奈川県・県西地域・足柄上郡というそれぞれの単位においても人口減少が進む中で、開成町では、人口の増加傾向が続いており、この好環境のもとで働かせていただけることを本当にありがたく思います。

これまでのまちづくりの基礎となっております「第五次開成町総合計画」については、その将来都市像やその実現に向けた政策を継承しつつ、随所に自らの考えを折り込んでいきたいと考えております。

まちづくりにおける目標は、「町民の皆さんにもっと幸せに、もっと笑顔になっていただく」ことです。何が幸せか、お一人おひとり異なりますが、「住み続けたい、住んでよかった」と思っていただくことが最も重要であると考えています。多くの自治体が同様の目標を掲げていることは承知していますが、まちづくりの目標は、住民の幸福の追求に尽きると考えています。

町民の皆さんに「住み続けたい、住んで良かった」と思っていただけることを、町の「あるべき姿」、「理想の将来像」とし、その最上位の目標に到達するために、まちづくり全体、そして教育や子育て、高齢者や障がい者福祉、防災、基盤整備、文化・スポーツなどそれぞれの分野において、今、何をすべきかを考え、実行してまいります。

次に、まちづくりの方向性についてですが、「もっといくぜ開成」の精神で、さらなる人口の増加、賑わいの創出を目指します。人口の増加を税収の増加に繋げ、税収の増加を町内全域におけるより効果的な施策へ結びつける好循環を繰り返すことで、町民の皆様の生活の利便性・生活の質が向上するよう努めます。

また、開成駅周辺を核に、開成町が名実ともに足柄の中心になる姿を目指します。医療・福祉サービスや大規模小売店など生活に不可欠な機能から、子育て支援施設や図書館など、利便性により利用ニーズが高まる機能を集約することによって、人々の行き来や交流が増え、賑わいが増し、事業者のビジネスもより成り立ち易くなり、不動産への需要も高まる循環を目指します。

開成町の持続可能性を高めるためには、好調な今が大事です。コロナ禍を経て、東京一極集中にも変化の兆しがあります。人と自然が調和する町・開成町は、自然環境に恵まれている上に、交通の利便性にも優れた立地であり、自然を満喫し、趣味に興じながら、都会にも通勤できることから、移住先の有力な候補地足り得ると自負しています。まちづくりのコンセプトである「田舎モダン」の本領を発揮し、町内外にその魅力を発信してまいります。

次に、まちづくりの基本姿勢について、述べさせていただきます。私のまちづくりの基本姿勢は、「ALLかいせい」です。この言葉には、4つの思いを込めています。

1つ目は、開成町民全員がまちづくりに参加していただく「ALLかいせい」。全員参加のまちづくりには、町民の皆様に当事者意識をもっていただき、我が町のことを自分事として捉えていただくことが必要です。このことによって、町への愛着や思い入れが深まり、シビックプライドが生まれると考えます。次期総合計画の策定などにおいて、できるだけ多く方に関わっていただけるよう、町民参画の機会を増やしてまいります。

2つ目は、地域や環境の違い、価値観の多様性を超えて、相互に理解し合う「ALLかいせい」。開成町は県内最小面積の町でありながら、環境が著しく異なる農業振興地域と新興住宅地が同居しています。各自治会、町民の皆様のニーズを的確に捉えるためにも、町政報告会や座談会、プロジェクトごとのワークショップなど、直接の「対話」を重視してまいります。

3つ目は、高齢者や障がいがある方々、生活にお困りの方々を、公的支援とともに地域で支え合う「ALLかいせい」。あらゆる立場・状況の方が町内で生活していくための公共サービスの充実はいうまでもなく、「お互いさま」の精神が自ずと醸成されるような地域づくりを推進してまいります。

4つ目は、政治的な対立を超え、建設的な議論によって前進できる「ALLかいせい」です。不要な対立によって、開成町の発展を滞らせるようなことがあってはなりません。緊張関係を保ちながらも、町民の幸福という唯一の目的地へ向かって、ともに歩んでいけるパートナーシップを大切にしてまいります。

続いて、理想の開成町を実現するための手法を、4つのキーワードとして掲げさせていただきます。

1つ目は「幅広いパートナーシップの構築」、2つ目は「包括的課題解決」、3つ目は「稼ぐ自治体」、4つ目は「町民本位のデジタル化」です。

まず、「幅広いパートナーシップの構築」ですが、私は、まちづくりにおいて、町民団体、民間企業、国や他の自治体との協力関係を重視してまいります。

開成町をはじめ全国の自治体財政は厳しく、職員数も大きくは増やせない中で、行政課題は多様化・複雑化しており、職員だけですべての課題に対応することが一層難しくなってきています。

しかしながら、社会課題の解決に挑んでいるのは、行政だけではありません。民間企業等は、社会貢献の場を求めていますし、社会課題の解決をビジネスにしたいというニーズもあります。町としては、町民団体やNPO、民間企業・民間人材と対等な立場として、ノウハウや資源・資本を活用させていただくことで、より効果的かつ効率的な施策の実現やコストの削減を図ることができます。

また、足柄上地域をはじめとする近隣自治体、神奈川県との広域連携体制をより強固にすることにより、ごみ処理施設などの生活インフラ維持や観光をはじめとする地域活性化の取組に対し、スケールメリットを最大限生かしてまいります。

地方自治法第2条では、「自治体は、最小の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」と定められており、最小の経費で最大の効果を挙げるための有力な選択肢が、このパートナーシップの構築であると考えています。

2つ目の「包括的課題解決」ですが、最小の経費で最大の効果を挙げるためには、一つの事業において複数の課題の克服を図ることや、複数の狙い・目的を持つという意識を高め、実践していくことが重要であると考えています。

公共施設を例にとれば、複合化や多機能化などを通じて、それぞれの機能を果たしつつ、施設の有効活用や老朽化対策、さらには町民の交流の促進などにも繋げていくことができます。

また、福祉コミュニティバスであれば、福祉目的に限定しないことを明確化することで、移動手段の確保にとどまらず、地域内の経済循環を支える取組に発展させていくことも可能と考えています。

社会課題の多様化・複雑化に加え、複数の目的意識をもった取組を推進するためには、庁舎内の組織の在り方についても検討が必要だと認識しています。縦割りの弊害を排除し、横断的なコミュニケーションを通じて、より効果的、かつ、より効率的に事業を推進するための体制が必要です。

今や自治体も経営を問われる時代です。組織の在り方を見直すだけではなく、民間活力を活用するためにまちづくり公社を設立するなど、既存の枠組みから一歩踏み出すチャレンジも不可欠だと考えています。

具体的には、ふるさと納税に付随する業務や巡回バスやデマンド型交通、インバウンド需要を取り込むために“民泊施設”、“移住を検討されている方向けのお試し住宅“、そして道路や公園、公共施設の管理などが対象になると考えています。業務内容によりますが、障がいがある方々が働く場にもしていきたいと考えております。

3つ目のキーワードは「稼ぐ自治体」ですが、現状として開成町の財政状況は、令和3年度、財政力指数0.89、経常収支比率73.5%、実質公債費比率5.1%、将来負担比率23.8%であり、健全と言えます。

しかしながら、今後、新庁舎建設に関わる債務の償還が始まることや、駅前通り線周辺地区土地区画整理事業に資金を要すること、今後も社会保障や公共施設の老朽化対策の経費の増加が見込まれることなどから、引き続き財政健全化に向けた努力は欠かせません。

必要とされる策を実現するためにも、先立つもの、すなわち財源の確保に全力をあげて取り組みます。

具体的には、ふるさと納税、特に企業版ふるさと納税に力をいれます。民間企業は社会や地域に貢献する機会を求めています。民間企業との良好な関係構築に注力し、当町の課題克服が社会全体の課題解決のヒントとなるよう、各企業から共感・支持いただける寄付の使いみちを用意してまいります。

また、雇用の創出、地域経済の成長のみならず、税収を増やすためにも、企業誘致の実現に努めてまいります。金融機関との連携も強化し、自らのネットワークも駆使しながら、企業誘致の候補先発掘に全力をあげます。

現在の健全な財政状況のうえにあぐらをかくことなく、「積小為大」の精神で、公共施設の命名権の販売、ネーミングライツなどにも挑戦し、財源の確保に奔走する所存です。

最後の「町民本位のデジタル化」について、デジタル化が時代の流れであることは、誰もが実感しているところだとは思います。肝心なのは、いたずらに最新技術を追いかけ、それを使うのが人間であるのを忘れてはならないということです。

「昭和・平成までは、需要が供給に合わせていた時代。令和は、供給が需要に合わせる時代に変わる。理由はシンプルに人口が減るから。故に、デジタル化が不可欠である」。これはデジタル庁統括官村上敬亮氏のことばです。私はこの言葉に強い共感を覚えます。

デジタルは、あくまでも町民の幸福を追求し、人口減少社会に立ち向かうための道具だと考えています。

総務省は、生産年齢人口が減り続ける中で、自治体は2040年には半分の職員数でも運営できるようにならなければならないとの提言をまとめています。行政手続きの電子化や決済のキャッシュレス化など、すでに一定程度のデジタル化が実現していますが、町民の皆様の利便性をさらに向上させ、各取組を一層効果的・効率的にするためにも、幅広い施策において行政DXを推進してまいります。

次に、私が思い描く政策について、個別の政策分野ごとに順次述べさせていただきます。

まず、はじめに「教育・子育て支援」の充実です。

開成町にとって、教育は一丁目一番地です。教育の町・かいせいの看板を引き続き掲げ、「開成育ち」が誇りやブランドとなるよう、教育委員会と連携しながら、教育の質を一段と押し上げてまいりたいと考えております。また、開成町ならではの教育の魅力を積極的に発信し、移住の促進にもつなげてまいります。

教育の充実の具体策としては、英語教育の更なるの充実を図りたいと考えております。グローバル化が一段と進む中で、英語をはじめとする外国語教育の重要性はますます高まっています。外国語教育に対する保護者の関心は極めて高いものと認識しています。

先生方の負担を増やさないことを前提に、町として、もしくは地域の方々のお力も借りながら、外国語教育の充実に積極的に取り組んでまいります。

小中学生のみならず、未就学児に対する外国語教育の充実、放課後にも外国語を学ぶことができる機会の提供などを目指してまいりたいと考えております。また、留学生の受け入れなどを通じた国際交流については、継続してまいります。

次にオンライン授業の体制整備についてです。オンライン授業は、今回のコロナ級の感染症への対策としてのみならず、インフルエンザ流行に因る学級閉鎖や自然災害時、様々な立場・状況に置かれた児童・生徒に教育の機会を平等に提供する手段として非常に有用です。

開成町においては、児童生徒1人1台の学習用端末を整備し、各学校において様々な活用が進められておりますが、公立学校の魅力が低下しないよう、児童生徒の皆さんにタブレット端末をさらに幅広く利活用してもらえるような環境を目指し、教育委員会や各学校の取組を積極的に支援してまいります。

全国的に貧困の問題も深刻です。学校に行きたいけど行けない、塾に行きたくても行けない環境の子どもたちも少なくありません。先生の負担軽減が課題となっている中、社会課題の解決に向けて積極的に地域の方々のお力をお借りしたいと考えております。

学校と地域の連携をさらに強化し、更には地域主導でサポートしていただく形に進化させていくことで、地域で子どもを育てていただき、ひいては貧困の連鎖を断ち切ってまいりたいと考えております。

次に、子育て支援についてです。これまで開成町においては、ハード・ソフトの両面で子育て支援の充実を図ってきたものと承知しておりますが、これらの支援策に加えて、子育て世代の負担軽減策として、多子世帯への支援を検討してまいります。

最後に図書館の充実についてです。私自身は、「教育のまち・開成」にふさわしい図書館の整備の構想を抱いております。現在の町民センター図書室は、蔵書数や面積、利用者数の点でも規模が小さく、点字本や拡大本も不十分で、電子図書の取り扱いはありません。

蔵書を増やすのみならず、インターネット環境を完備して、自習や仕事、会議や待ち合わせ、展示会、くつろぎや憩いの場として、さらには家でも職場でもない第三の居場所「サードプレイス」としてなど、それぞれの目的でご利用いただけるような空間を創り出したいと考えております。

町の歴史や特産物、企業などの情報提供や、図書館を活用した調べものコンクールの開催、時事問題やときの話題などの情報を提供するなど、様々な学び、情報の発信拠点としていきたいと考えております。

図書館の整備候補地としては、都市計画道路・駅前通り線の一角を想定しています。図書館単体ではなく、医療機関や飲食店など需要のある施設が同居する複合施設とし、駅近の利便性を最大限に活かして、町内外から人の流れを取り込み、多世代の人々が交流する拠点を目指したいと考えております。

個別の政策分野の2つ目は、「防災・減災」をはじめとする安全・安心の確保についてです。

近年、地球温暖化の影響もあり、自然災害が多発、激甚化していることはご承知のとおりです。自治体の使命である町民の生命を守るための対策をさらに強化してまいります。

開成町で想定される自然災害は、「地震」、「水害」、「富士山の噴火」です。

まず、地震対策ですが、南海トラフ地震は“30年以内に70~80%”の確率で発生すると予測されております。人的被害として想定されるのは“家具の転倒、建物の倒壊、火災”であり、これらの対策として、耐震診断や家具転倒防止器具、消火器・感震ブレーカーの設置等を促進させる必要があります。

また、火災から命を守るためには、初期消火が非常に重要になります。消火栓を使った消火訓練など、実践的な防災訓練を計画してまいります。

つぎに水害ですが、熊本県球磨川の氾濫などから得られた教訓は、一時的に、町内外に、車などで避難できる場所を確保する必要があるということです。また、開成町の場合は、酒匂川霞堤のリスクもあります。霞堤は、下流の水位を下げる効果があり、流域治水の上では重要なものです。

しかしながら、2019年台風19号においては、千曲川で霞堤からの浸水により大きな被害が発生しました。ゲリラ豪雨を含めた雨量の増加を踏まえ、土手の強化や嵩上げなどを県に要請していかなければならないと考えております。

富士山噴火については、ハザードマップが改訂され、開成町に溶岩流が到達する可能性が指摘公表されました。ただし、過去の噴火履歴からも溶岩流が町に到達する可能性は限りなく低いと思われます。

それでも、火山灰による降灰被害など、万が一の場合に備えて、町外に避難場所を確保する必要はあります。町の避難計画をまもなく策定・公表する予定であり、今後も県や近隣自治体との連携を図ってまいります。

次に全ての災害に共通して、3つの取組を進めてまいりたいと考えております。

1つ目は災害時に援護を必要とする方の情報共有です。ご本人やご家族の同意が条件となりますが、有事においては、個人情報よりも命の方が大事であり、民生委員さんや自治会・組内で情報共有できる避難行動要支援者登録制度のさらなる活用を進めてまいりたいと考えております。

2つ目は、他の自治体との災害時相互応援協定の締結です。同時に被災する可能性の低いエリアの複数の自治体と災害時相互応援締結することで、避難場所を確保するのみならず、災害時においても行政サービスが滞ることがないよう、お互いに助け合うことができる関係性を築いてまいりたいと考えております。

3つ目は、ボランティア受入機能と派遣機能の拡充です。災害発生時の救援、復旧、復興などにおいて重要な役割を担うのがボランティアです。開成町においては、ボランティアを受け入れる体制、派遣する体制、いずれもが拡充させる余地があると考えております。

ボランティアの受入れについては、発災直後から避難所生活を通して、町民の皆さんの命を守るため、ボランティアの皆さんに滞りなく活動いただき、その支援の効果を発揮いただける体制を整備してまいりたいと考えております。ボランティアの派遣に関しては、被災者の命を守り、復旧を手助けいただくことが主目的でありますが、被災地の現場を見ていただくことの意義は非常に大きいと考えています。

いざ、開成町が被災したら、どうなってしまうのか?事前にどのような対策が必要なのか?想像力を鍛えていただく機会として、開成町の災害対策の充実にもつなげてまいりたいと考えております。

次に、交通・防犯対策として、開成駅前の交番設置に向けた取組です。全国的に交番の統廃合が進められており、神奈川県においても令和2年度から10年間かけて、その数を470から400へ減らす方針が示され、実行に移されています。

ひとつの交番に警官を集約することによる事件事故への対処能力の向上と建物の老朽化対策が主な理由とされており、状況としては厳しい面もあります。しかしながら、人口が増加していること、開成駅への急行停車により、利用者増加が引き続き見込まれることなどから、短期的にはパトカー勤務員の立ち寄り、警戒の強化要請やアクティブ交番の導入も含め、町民の安心・安全のため必要な働きかけを行ってまいります。

個別の政策分野の3つ目は、「基盤整備」についてです。

基盤整備については、駅前通り周辺地区土地区画整理事業に合わせて、都市計画道路・駅前通り線の整備を進めます。開成町のたゆまぬ発展のため、そして将来的に足柄紫水大橋と国道255号線がつながる予定であることも視野に入れれば、足柄地域全体の活性化のためにも、非常に重要な事業となります。人口増加、賑わいの創出に確実に結び付け、税収増加などを通じて投資を回収し、町全体に還元させなければならないと考えております。

また、都市計画道路山北・開成・小田原線についても、県へ要望してまいります。

次に公園の整備についてです。町内の公園をより多くの方にご利用いただけるよう、幅広い世代のニーズに対応できる設備や遊具の拡充を図ってまいりたいと考えております。

多世代の人々が集うことで、賑わいや交流が生まれ、健康寿命の延伸にもつながります。また、町内で過ごしていただくことにより、町内での消費拡大の効果も期待できます。

共生社会の実現に向けた一歩として、インクルーシブ遊具の導入についても実現させたいと考えております。誰でも分け隔てなく、障がいがあるなしに関わらず、遊具を利用いただくことで、まずは相互の理解の促進にもつなげていきたいと考えております。

個別の政策分野の4つ目は、「福祉」についてです。

まずは、福祉コミュニティバスについてです。生活の足に困らない環境を整備する必要があるものと認識しており、福祉コミュニティバスの仕組みを改善していくことが必要と考えております。

これまでの利用状況、アンケートの結果などを検証しながら、利用者のニーズに応える仕組みに改善してまいりたいと考えております。町外までの運行の可能性も視野に、費用対効果の視点でスケールメリットを活かすために、近隣市町との連携も模索してまいります。

次に、地域での支え合い活動についてです。自治会加入率の低下が示すように、地域での縁や絆が薄れつつあるものの、最低限かつ緩やかなつながりを維持することは極めて重要であると認識しております。

高齢者のみの世帯が増加していく中で、ゴミ捨てや草むしりなど助けが必要になってきており、自治会内での支え合い活動を、財政面やノウハウの共有などを通じて全面的にサポートしてまいりたいと考えております。

個別の政策分野の5つ目は、「環境」についてです。

2050年脱炭素社会実現に向けた取組をさらに加速化させます。これまでの住民向けの補助事業に加え、町内の温室効果ガス排出の7割を占める事業者の脱炭素行動を促すため、新たに中小企業向けの創・省・蓄エネ設備導入促進策を展開していきます。

企業活動における環境問題等への取組が問われる、いわゆるESG評価は、大企業だけでなくそのサプライチェーンを担う中小企業まで影響し始めています。町内の中小企業のカーボンニュートラルと併せて、企業間競争を生き抜く産業育成を進めていきます。

また、ゼロカーボンシティ創成の取組をALLかいせいで進めるため、住民・自治会・企業・行政がつながり相互に協力して知識の研鑽や信用創造を図る仕組みを構築します。

公共施設のカーボンニュートラルについては、再エネ設備の導入が可能な施設に限られますが、初期費用をかけずに太陽光発電設備を設置する手法(PPA)を用いるなどして、創意工夫によりできるだけ早期に実現します。

ごみ行政については、リユースへの意識や、物を大切に、ごみを極限まで無くすゼロウェイストの理念を町の中で醸成し、ごみの更なる削減を図ります。

個別の政策分野の6つ目は、「産業」についてです。

商工業の分野についてはすでに述べたとおり、基盤整備と企業誘致による地域内経済の好循環によって町内全域の活性化を図ります。

町の北部地域が中心となる農業については、ウクライナ情勢などによる物価高騰を受けて、食料自給率を押し上げる必要性があらためて叫ばれ、その重要性が見直されています。また、町民に癒しを与える田園風景や、洪水を防ぐ自然の涵養システムなど、農業が持つ多面的機能は見過ごすことができません。

一方で、全国的にも、開成町においても農業従事者の数は減少し続けております。農産物の付加価値を高めるなど農業そのものの魅力を高め、新たな担い手の育成・組織化を進めることのほか、既存経営体への支援や企業参入によって、農業の担い手の確保に努めてまいりたいと考えております。

以上、町長就任にあたっての所信を表明させていただきました。

町民の皆様がもっと幸せに、もっと笑顔になっていただくために、そして開成町のたゆまぬ発展のために、精一杯働き、町長という重責を果たしてまいる所存です。

議員の皆様におかれましては、町民の皆様の福祉の増進のため、開成町の持続可能性を高めるため、今後ともご指導ご協力を賜りますよう、お願い申し上げます。

本文終わり
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企画政策課
説明:秘書、栄典、国政・県政要望、特定課題、総合計画、行政改革、広域行政、統計調査、男女共同参画、広報広聴、シティプロモーション、定住促進、国際交流など
住所:258-8502 神奈川県足柄上郡開成町延沢773
TEL:0465-84-0312
FAX:0465-82-5234